「何度カビキラーをかけても、床の黒ずみが全く落ちない」 「ラップでパックまでしたのに、流してみたら元のままだった」
お風呂掃除でこんな経験をして、がっかりしたことはありませんか? 「もっと強力な洗剤じゃないとダメなのかも」「放置時間が足りなかったのかな」と考えてしまいがちですが、実はその方向で頑張っても、その黒ずみは落ちません。
なぜなら、その黒ずみの正体は、カビキラーが苦手とする汚れだからです。 カビキラーは万能ではありません。「得意な汚れ」と「全く歯が立たない汚れ」がはっきりしています。
この記事では、お掃除のプロの視点から「なぜカビキラーが効かないのか」という理由と、実際にその汚れを落とすための「正しい手順」を、解説します。
カビキラーで落ちない風呂床の黒ずみの正体
カビキラーを何度使っても落ちない場合、その汚れは単なるカビではありません。
いくつかの種類の汚れが重なり合って、強固な層を作っています。これを「複合汚れ」と呼びます。
黒カビではなく、覆われた汚れ
床の黒ずみの一番下には、確かに黒カビがいることが多いです。しかし、カビキラーが効かない場合、そのカビが表面に出てきていません。
カビの上に、カビキラーでは溶かせない「別の硬い汚れ」が覆いかぶさって、カビを守ってしまっている状態です。
洗剤は、直接触れた部分にしか効果を発揮しません。表面を覆っている汚れを取り除かない限り、いくら洗剤をかけても、奥にあるカビには成分が届かないのです。
水垢がフタをしてカビに届かない
カビを覆っている主な正体は「水垢」です。 水垢とは、水道水に含まれるミネラル分(カルシウムなど)が乾いて固まったものです。
ここで少し化学の話になりますが、相性の問題があります。
水垢の性質:アルカリ性
カビキラーの性質:アルカリ性
汚れ落としの基本は「中和」ですが、アルカリ性の洗剤は、同じアルカリ性の汚れを溶かすことができません。
つまり、水垢でコーティングされた黒ずみにカビキラーをかけるのは、全く効果がない行為なのです。水垢がフタとなり、洗剤を弾き返しています。
皮脂・石けんカスが層になって固着する
さらに厄介なのが、「金属石けん」と呼ばれる汚れです。
これは、体から出た「皮脂」や「石けんカス」が、水道水のミネラル分と化学反応を起こしてできる、白くて硬いカスです。
金属石けんは水に溶けにくく、こびりつく性質があります。
「カビ」の上に「皮脂汚れ」が乗り、さらに「水垢」と「金属石けん」が全体を覆ってガチガチに固まる。
この何層にもなった状態こそが、普通の掃除ではびくともしない黒ずみの正体です。
カビキラーで黒ずみが濃くなったように見える理由
「掃除をしたら、余計に黒ずみが目立つようになった気がする」 そう感じたことはありませんか?
実はそれは気のせいではなく、本当に目立つようになっている可能性があります。
表面だけ漂白されムラが出る
カビキラーには強力な漂白作用があります。
これを使うと、汚れの層の表面にある、カビキラーで反応できる汚れ(ヌメリなど)だけが白く漂白されます。
しかし、反応しなかった水垢などの黒ずみはそのまま残ります。
その結果、床全体の中で「白くきれいになった部分」と「黒く残った部分」の差がはっきりしてしまいます。
周りが白くなったことで、相対的に黒ずみがくっきりと浮かび上がって見えてしまうのです。
凹凸に汚れが押し込まれる
最近のお風呂の床(カラリ床など)は、水はけを良くするために表面に細かい溝やデコボコがあります。
カビキラーをかけてブラシでゴシゴシ擦ると、溶け出した汚れや洗剤のカスが、この細かい溝の奥深くに押し込まれてしまうことがあります。
すすぎが不十分だと、その汚れが溝の中で乾いて固まり、溝のラインに沿った取れない黒ずみになってしまいます。
カビキラーで落ちない風呂床黒ずみでやりがちなNG行動
落ちないからといって、無理な掃除をすると、床そのものを傷めてしまいます。
特に以下の3つは、汚れは落ちないのにリスクだけが高いので避けてください。
洗剤を変えずに放置時間だけ延ばす
「30分でダメなら一晩置こう」というのは危険です。 カビキラーのような塩素系漂白剤は、とても強い成分です。
長時間放置すると、お風呂の床材(樹脂やプラスチック)を傷め、変色させたり、表面のツヤをなくしたりする原因になります。
効かない洗剤を長く置いても、汚れは落ちず、床が傷むだけです。
強いブラシでゴシゴシ擦る
「硬いデッキブラシ」や「金たわし」で力任せに擦るのもNGです。
お風呂の床は、意外と柔らかい素材でできています。強く擦ると目に見えない細かい傷がつきます。
その傷の中にカビや汚れが入り込むと、今度はブラシの毛先さえ届かなくなり、掃除ができなくなります。
また、傷ついた床は汚れがつきやすくなるため、すぐにまた黒ずんでしまうという悪循環に陥ります。
洗剤を重ね使いする
これが最も危険です。「カビキラー(塩素系)」と「サンポールなどの酸性洗剤」を混ぜたり、連続して使ったりするのは絶対にやめてください。
「まぜるな危険」と書いてある通り、この2つが混ざると有毒なガスが発生し、命に関わります。
「混ざらなければ良い」と思っても、排水口の中で混ざったり、流しきれていない成分が反応したりすることがあります。
必ず片方を完全に洗い流してから、次の洗剤を使うようにしてください。
カビキラーで落ちない風呂床黒ずみの正しい落とし方
では、どうすればこの頑固な黒ずみを落とせるのでしょうか。
ポイントは「順番」です。カビキラーが効かないなら、まずはその邪魔をしている「フタ(水垢)」を取り除くことから始めます。
①まず酸性洗剤で水垢を崩す
最初に使うべきは、カビキラーではなく「酸性」の洗剤です。これで表面を覆っている水垢や金属石けんを溶かします。
床を乾かす: 水分があると洗剤が薄まるので、できるだけ拭き取ります。
酸性洗剤をかける: 「お風呂用の酸性洗剤」や「クエン酸水(水200mlにクエン酸小さじ1~2)」を黒ずみにかけます。
※サンポールなどのトイレ用洗剤は強力ですが、床が変色するリスクが高いので、最初は浴室用を使いましょう
パックする: 洗剤の上からキッチンペーパーを貼り、ラップをして30分〜1時間ほど置きます。これで成分を浸透させます。
擦る: 時間が経ったら、ブラシで優しく擦ります。これで表面の硬い汚れが崩れます。
②水で完全に洗い流す
この工程が一番大切です。 酸性洗剤を使った後は、シャワーで念入りに、これでもかというくらい洗い流してください。
もし酸性の成分が残っている状態で、次のカビキラーを使ってしまうと、有毒ガスが発生します。
泡が消えるだけでなく、成分が完全に残らないよう、排水口周りも含めて徹底的に流してください。
③必要な場合のみカビキラーを使う
酸性洗剤で洗った後、床を見てみてください。この段階できれいになっていれば、掃除は終了です。
もし、まだ黒い色が残っているなら、それは奥に潜んでいた「カビ」です。
表面のフタが取れた今、カビは無防備な状態です。ここで初めて「カビキラー」を使います。
スプレーして数分置き、洗い流してください。最初とは比べ物にならないほど、効果が出るはずです。
それでも風呂床の黒ずみが落ちない場合の限界ライン
この「酸性→塩素系」の2段階洗浄をやっても落ちない場合、それはもう「汚れ」ではないかもしれません。
床材の奥まで染み込んでいる
床の素材自体の劣化が進み、素材の内部まで色素やカビが染み込んでいる状態です。
また、コーキング(ゴムパッキン)の奥深くまでカビの根が入っている場合、表面から洗剤をかけても届きません。
これは掃除では落とせないレベルです。
表面が白くザラついている
黒ずみだと思っていたものが、実は床の「傷」や「変質」であるケースです。
床の表面が荒れて細かい穴が無数に空いていると、光の加減で白っぽく見えたり、濡れると影で黒く見えたりします。
触ってザラザラしているなら、それは汚れではなく素材の寿命かもしれません。
掃除してもすぐ黒ずみが戻る
綺麗にしても、数日でまた同じ場所が黒ずんでくる場合。 これは床の表面にある「汚れを防ぐコーティング」が剥がれてしまっている状態です。
素材がむき出しになっているため、入浴のたびに皮脂汚れを吸着してしまいます。
この状態になると、掃除の頻度を上げるしか維持する方法はありません。
実際に多い「自力でやって後悔したケース」
「なんとか自分で落としたい」と頑張りすぎた結果、取り返しのつかない失敗をしてしまった例も多いです。
床のツヤが消えた
「酸が効く」と聞いて、強力なトイレ用洗剤を原液で長時間放置した結果、床の表面が酸焼けを起こしてしまったケースです。
光沢がなくなり、白くカサカサになってしまいます。一度こうなると、元には戻りません。
滑りやすくなった
電動ブラシや研磨剤で削りすぎた結果、床の滑り止め加工まで削り取ってしまったケースです。
濡れるとツルツル滑るようになり、転倒事故の危険性が高まります。
黒ずみがまだらに残った
洗剤を床全体に塗らず、適当に撒いて放置した結果、液だまりができた部分だけ変色して、ヒョウ柄のような跡が残ってしまったケースです。
見た目が悪くなるだけでなく、均一に戻すのはプロでも困難です。
風呂床の黒ずみが落ちないなら業者を検討するタイミング
自分でやるには限界があると感じたら、プロのクリーニング(ハウスクリーニング)に頼るのも賢い選択です。
広範囲に黒ずみが広がっている
黒ずみが一部だけでなく、洗い場全体や壁際まで広がっている場合、市販の洗剤と手作業のブラシでは時間と労力がかかりすぎます。
プロなら、業務用の床洗浄機や高圧洗浄機を使って、広範囲を一気に、ムラなく洗浄できます。
床材を傷めずに落としたい
「賃貸だから退去時のトラブルを避けたい」「まだ新しい家だから床を傷つけたくない」という場合です。
自己流の掃除は常にリスクが伴います。プロは汚れの種類と床の素材を見極め、適切な洗剤の濃度を調整します。
床を傷めずに汚れだけを落とす技術にお金を払うと考えれば、決して高くはありません。
風呂床の黒ずみを繰り返さないためにできること
せっかく綺麗にした床、二度とあんな黒ずみは見たくないですよね。毎日のちょっとした習慣で、予防することができます。
使用後に熱めのシャワーで流す
お風呂から上がる時、床には皮脂や石けんカスが残っています。
これらは冷えると固まります。 最後に出る人が、50度くらいの熱めのシャワーで床全体をサッと流してください。
汚れを溶かして流すだけでなく、カビ菌を熱で退治する効果もあります。
床の水分を残さない
水垢もカビも、水分が乾くときに発生します。床に水滴がなければ、汚れはつきません。
スクイージー(水切りワイパー)で水を切るか、タオルで拭き上げるだけで、黒ずみの発生は劇的に減らせます。
換気を止めない
湿気はカビの大好物です。入浴後は必ず換気扇を回し、できれば24時間つけっぱなしにしてください。
床を早く乾かすことが、一番の予防策です。
まとめ|風呂床の黒ずみはカビキラーだけでは解決しない
お風呂の床の黒ずみについて解説しました。
最後に、大切なポイントを振り返ります。
・原因:落ちない黒ずみは、カビの上に「水垢」などが被さった複合汚れ。
・洗剤:アルカリ性のカビキラーは、水垢には効かない。
・手順:①酸性洗剤で水垢を溶かす → ②しっかり水で流す → ③カビキラーでカビを落とす。
・注意:酸性と塩素系は絶対に混ぜないこと。
・判断:これでも落ちないなら、プロに相談するか、床の劣化を疑う。
「カビキラーが効かない=もっと強力なカビ取り剤が必要」ではありません。 「違う種類の洗剤(酸性)が必要」というのが正解です。
正しい知識と手順で、諦めていた黒ずみをスッキリ落としてみてください。