飲食店の床がベタつき、何度モップで拭いても黒ずみが取れない状況は、多くの店舗運営者を悩ませています。
この状態を2週間以上放置すると、スタッフが転倒して怪我をする労災リスクが高まるだけでなく、不衛生な印象を与えて客足が遠のく原因になります。
本記事では、清掃業者が実際に行っている油汚れの除去手順と、自力では対処できない危険なケースについて具体的に解説します。
正しい知識と道具があれば、床の清潔さは取り戻せます。まずは、なぜ家庭用の掃除方法では歯が立たないのか、その理由から見ていきましょう。
飲食店の床の油汚れ落とし方|プロが教える3つの鉄則
家庭用の掃除道具や冷たい水で作業を続けても、飲食店の床に固着した油汚れを除去することはできません。
誤った方法を繰り返すと、労力が無駄になるだけでなく、汚れを床全体に塗り広げて状況を悪化させる結果となります。
家庭用はNG!pH12以上の「業務用アルカリ洗剤」を選ぶ
ドラッグストアなどで購入できる家庭用の中性洗剤や重曹水では、飲食店特有の分厚い油膜を分解する能力が不足しています。
動物性油脂や焦げ付いた油汚れを化学的に分解するには、pH値の高い強力な洗浄剤が必要です。
・pH12以上の業務用アルカリ洗剤
・水酸化ナトリウムや水酸化カリウムを配合したもの
・油汚れ専用のブレイクアップ洗剤
これらの洗剤は、固まった油を化学反応によって石鹸状に変化させ、水で流せる状態にします。
成分表を確認し、必ず「業務用」または「プロ仕様」と記載された強アルカリ性の製品を選定してください。
水は厳禁!油の融点を上回る「50℃以上のお湯」を使用する
油汚れの清掃において、水道水をそのまま使用することは避けてください。
豚脂(ラード)や牛脂などの動物性脂肪は、40℃以下になると冷えて固まる性質があります。冷たい水や洗剤液を使用すると、除去しようとした油がその場で凝固し、かえって床にへばりついてしまいます。
油を液体に戻して浮き上がらせるためには、常に50℃から60℃のお湯を使用する必要があります。
給湯器の設定温度を上げ、バケツに溜める水もすべてお湯を使用することで、洗剤の洗浄効果を最大限に高められます。
ゴシゴシ擦る前に洗剤を浸透させる「つけ置き時間」をとる
洗剤を塗布してすぐにブラシで擦り始めても、表面の汚れしか削り取れず、根本的な解決にはなりません。
硬くなった油汚れを柔らかくするには、洗剤成分を汚れの奥まで浸透させる時間が必要です。
洗剤を塗布してから10分から15分程度そのまま放置することで、化学反応が進み、汚れが床から剥がれやすい状態になります。
力を入れて擦る作業よりも、この「待つ時間」の方が、汚れ落ちの結果に大きく影響します。
【手順】飲食店の床についた頑固な油汚れを落とす方法
適切な道具とお湯を準備したら、実際に汚れを落とす作業に入ります。
ここでは、清掃業者が現場で実施している具体的な工程を、再現可能な手順として解説します。
①50〜60℃のお湯で希釈した洗剤を床全体にたっぷりと撒く
まずは床のゴミを掃き取った後、規定の倍率にお湯で薄めたアルカリ洗剤を、床全体に散布します。
この際、モップで薄く塗るのではなく、床面がひたひたになる程度までたっぷりと撒くことが重要です。
・バケツから直接、または散布用のジョウロを使用する
・液が足りないとすぐに乾いてしまうため多めにまく
・滑りやすくなるため、作業靴(コックシューズなど)を着用する
床の上に「洗剤のプール」を作るイメージで、液量を惜しまずに使用してください。
②10〜15分放置して油汚れを「乳化(白濁)」させる
洗剤液を撒いたら、そのまま触らずに放置します。この間にアルカリ成分が油を分解し、透明だった洗剤液が徐々に白く濁ってきます。
これを「乳化(にゅうか)」と呼びます。
洗剤が乾いてしまうと汚れが再付着するため、乾燥しそうな場所があればお湯や洗剤液を追加してください。
十分に乳化させることで、その後のブラッシング作業がスムーズになります。
③デッキブラシで擦り、汚水は「スクイジー」で回収する
汚れが浮き上がってきたら、デッキブラシで床全体を擦ります。
このとき最も重要なのが、発生した黒い汚水の回収方法です。
モップや雑巾で拭き取ろうとすると、汚水を吸いきれず、汚れを床に塗り広げるだけになります。
・ゴム製のスクイジー(水切りワイパー)を使用する
・汚水を一箇所に集める
・集めた汚水をチリトリや乾湿両用バキュームで吸い取る
スクイジーを使って汚水を物理的に床から切り離すことで、乾燥後のベタつきや再汚染を防ぐことができます。
④ヌメリがなくなるまでお湯ですすぎ、完全に乾燥させる
汚水を回収した後は、洗剤成分が床に残らないよう、きれいなお湯ですすぎ作業を行います。
強アルカリ性の洗剤が残留していると、床材を傷めたり、新たな汚れを引き寄せたりする原因になります。
・お湯を撒いてスクイジーで切る作業を2回繰り返す ・最後に乾いたウエスで水分を拭き取る
・送風機や換気扇を使い、短時間で乾燥させる
指で触ってヌメリがなくなり、キュッとした感触になれば完了です。
【要注意】自力掃除で失敗しやすい「ワックス床」の罠
床にワックスが塗られている店舗の場合、強力なアルカリ洗剤を使用することで、予期せぬトラブルが発生する可能性があります。
汚れを落とすつもりが、かえって床の状態を悪化させてしまうケースについて説明します。
強力な洗剤は「古いワックス」も溶かしてしまう
業務用アルカリ洗剤は油汚れだけでなく、床を保護している樹脂ワックスの膜も溶解させます。
ワックスが中途半端に溶け出すと、油汚れと混ざり合い、粘着質の高いドロドロとした物質に変化します。
一度この状態になると、通常の清掃では取り除くことが非常に困難になります。
床が以前よりも黒ずんで見えたり、歩くたびに靴が張り付くような強いベタつきが発生したりします。
ワックスが塗布されている床で強アルカリ洗剤を使用する際は、表面の洗浄だけでなく、ワックス層ごとの除去を覚悟する必要があります。
中途半端に溶けたワックスは「余計に黒ずむ」原因になる
溶けたワックスが床に残ったまま乾燥すると、表面が凸凹になり、その隙間に新たな汚れが入り込みます。
これを繰り返すと、床全体がまだら模様に汚れ、清潔感が著しく損なわれます。
・ムラのある黒ずみが発生する
・靴跡がくっきりと残るようになる
・乾燥してもベタつきが解消されない
このような状態は「ビルドアップ」と呼ばれ、表面を擦るだけの清掃では解決できません。
何層にも塗り重ねた床は「剥離(はくり)洗浄」しか手がない
ワックスと汚れが混ざり合い、何層にも蓄積してしまった床をきれいにするには、「剥離洗浄」という作業が必要です。
これは、専用の剥離剤を使用して、過去に塗ったワックスをすべて溶かし、床材(素材)の状態までリセットする作業です。
剥離洗浄は大量の洗浄液と専門的な機材、そして高度な技術を要するため、店舗スタッフだけで実施するのは現実的ではありません。無
理に行おうとすると、床材が剥がれたり、什器の下に廃液が流れ込んだりするリスクがあります。
なぜ落ちない?飲食店の床が黒ずみ・ベタつく根本原因
毎日営業終了後にモップ掛けをし、洗剤も使っているはずなのに、なぜか床が黒ずんでいく。
そんな悩みを抱える店舗は少なくありません。ここでは、日々の清掃努力を無駄にしてしまう、構造的な原因について解説します。
油汚れとワックスが混ざった「多層汚れ(ビルドアップ)」
毎日の清掃で落としきれなかった微量な油汚れの上に、定期的にワックスを塗り重ねていないでしょうか。
これにより、汚れが透明なワックスの層の間に閉じ込められ、サンドイッチ状に積み重なってしまいます。
表面をどれだけきれいに拭いても、下の層にある黒ずみは透けて見えるため、床全体が薄汚れて見えます。
これが「毎日掃除してもきれいにならない」と感じる最大の原因です。
この状態になると、物理的に上の層を削り取るしかきれいにする方法はありません。
汚れたモップの使い回しによる「油の塗り広げ」
清掃に使用しているモップ自体が、油で汚れて黒くなっているケースも多く見られます。
油を含んだモップで床を拭くことは、汚れを拭き取っているのではなく、薄めた汚れを床全体に均一に塗り広げているのと同じです。
・モップの糸が黒く固まっている
・洗浄しても油の臭いが取れない
・すすぎ水がすぐに真っ黒になる
このような道具を使用し続ける限り、床のベタつきが解消されることはありません。道具の定期的な交換や、使用後の徹底した洗浄管理が不可欠です。
床材(長尺シート等)の目地に入り込んだ「酸化した油」
飲食店の床によく使われる長尺シートやノンスリップシートには、滑り止めのための細かな凹凸(エンボス)加工が施されています。
この微細な溝の奥深くに油が入り込み、時間の経過とともに酸化して硬くなると、モップやブラシの毛先が届かなくなります。
酸化した油は樹脂のように硬化し、さらに新しい汚れを吸着する土台となります。
見た目が黒くなるだけでなく、厨房特有の古びた油の臭いを発生させる原因にもなります。
自力の油汚れ落としに限界を感じたら?プロ依頼の判断基準
店舗での自力清掃で対応できるレベルを超えている場合、無理に作業を続けると、コストやリスクが増大します。
専門業者への依頼を検討すべき具体的な状況を挙げます。
靴底がグリップせず、氷の上のように滑る状態である
床の油膜が厚くなり、スタッフやお客様が歩行時に滑りを感じる場合は、直ちに対処が必要です。
転倒事故が発生すれば、治療費や休業補償の問題に発展する可能性があります。
安全管理の観点から、これ以上放置できない危険な水準と言えます。
表面的な洗浄ではなく、滑りの原因となっている油層を根こそぎ除去する必要があります。
床全体が黒く変色し、強力な洗剤を使っても反応しない
業務用アルカリ洗剤を使用し、お湯でつけ置きをしても汚れが浮いてこない場合、その汚れは床材と一体化してしまっているか、ワックス層の奥深くに埋没しています。
・洗剤をかけても白く乳化しない
・ブラシで擦っても変化がない
・床材の元々の色が全く見えない
この状態は、化学反応による分解が通用しないレベルまで汚れが変質しています。専用の機械(ポリッシャー)による物理的な切削洗浄が必要です。
厨房特有の「酸化した油の臭い」がホールまで漂っている
床に染み込んだ油が酸化すると、不快な臭いを放ち始めます。
換気扇を回しても店内に油臭さが残る場合、床全体が巨大な臭いの発生源になっている可能性があります。
お客様は臭いに敏感です。料理の香りを損なうほどの油臭は、店舗の評価を著しく下げる要因となります。
消臭剤では誤魔化せないため、原因物質である床の油汚れを完全に取り除く必要があります。
失敗しない飲食店の床清掃業者の選び方とチェックリスト
業者選びを間違えると、表面だけを撫でるような作業で終わり、数日後には元の状態に戻ってしまうことがあります。
確実に汚れをリセットできる業者を見極めるためのポイントを整理します。
表面洗浄だけでなく「剥離(はくり)洗浄」の実績があるか
前述の通り、ワックスと油が混ざった汚れを除去するには「剥離洗浄」の技術が必須です。
通常の「ポリッシャー洗浄」や「表面洗浄」の見積もりだけを提示してくる業者は、汚れの深さを見抜けていない可能性があります。
「古いワックスをすべて剥がして、床材をリセットすることは可能ですか?」と質問し、明確な実績や作業工程の説明があるかを確認してください。
厨房機器の下やグリストラップ周辺も対応範囲内か
床の見える範囲だけをきれいにする業者も存在します。
しかし、本当に汚れが溜まっているのは、冷蔵庫やフライヤーの下、グリストラップ(油水分離槽)の周辺です。
これらの場所を放置すると、害虫の発生源となります。
・什器の下までブラシを入れてくれるか
・動かせる什器は移動して清掃してくれるか
・排水溝周りも作業範囲に含まれるか
契約前に作業範囲(仕様)を細かく確認することが、後悔しないための重要な手順です。
深夜や早朝など「店舗の営業時間外」に対応可能か
飲食店にとって、清掃のために営業を休むことは大きな損失です。
売上を確保しながら床をきれいにするためには、閉店後の深夜や、開店前の早朝に作業を完了できる業者が望ましいです。
鍵の預かり対応が可能か、近隣への騒音配慮ができるかなど、店舗運営の都合に合わせた柔軟なスケジュール調整ができるかどうかも、選定の大きな基準となります。
飲食店の床の油汚れ落とし方に関するよくある質問
重曹やセスキ炭酸ソーダでも飲食店の床掃除は可能ですか?
家庭のキッチン程度の軽い汚れであれば可能ですが、営業中の飲食店で使用するには洗浄力が不足しています。
重曹のpHは約8.2、セスキは約9.8ですが、飲食店のハードな油汚れを分解するにはpH12以上のアルカリ度が必要です。
労力をかけても期待する効果が得られない可能性が高いため、業務用洗剤の使用を推奨します。
毎日掃除しているのにすぐにベタつくのはなぜですか?
主な原因は「洗剤成分の残留」または「換気不足」です。洗剤を十分にすすがないと、残った成分が湿気を吸ってベタつきの原因になります。
また、換気扇の吸い込みが弱いと、調理中に発生した油煙(オイルミスト)が排気されずに床へ落下し、新たな油膜を作ってしまいます。
床清掃と合わせて、換気扇やフィルターの清掃状況も見直す必要があります。
プロに床清掃を依頼する頻度の目安は?
業態によって異なりますが、油を多く使う中華料理店や焼肉店では3ヶ月から半年に1回、カフェや軽飲食であれば半年に1回から1年に1回程度が目安です。
日常清掃で維持できる限界が来る前に定期清掃を入れることで、常に清潔な状態を保ちやすくなり、結果的に大規模な修繕コストを抑えることができます。
飲食店の床の油汚れは「剥離洗浄」で根本解決を
床の汚れは、日々の営業に追われる中でどうしても後回しになりがちな問題です。
しかし、お客様は無意識のうちに床の清潔さを感じ取り、お店の印象を決めています。
ベタつく床がきれいになり、本来の床材の色が戻るだけで、店内全体が明るく見え、スタッフの表情や動きも変わります。
もし、ご自身での清掃に限界を感じている場合や、一度徹底的に汚れをリセットしたいとお考えの場合は、プロによる剥離洗浄を検討してみてください。
大阪民泊清掃代行クリーンスマイルズでは、民泊施設だけでなく、飲食店の床清掃にも対応しています。
まずは現状の床の状態をご相談ください。最適な解決策を一緒に考えさせていただきます。